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2007年03月24日

Tくん

Tくんを見かけた。
歌のレッスンから帰ってくる途中,
赤信号で止まっていたら左の歩道をてくてくと歩いてきた。

Tくんは今小学校6年生。
わたしは過去に彼を担任したことがある。
ひさしぶりに見かけたのでとっても嬉しかった。
わたしは車に乗っていたので,
信号が青に変わらないことを祈った。
彼がわたしの車の近くにきたら
窓を開けて声をかけるつもりだった。



彼は背がのびて大人っぽくなっていたけれど
歩きながら回転する癖も
1人でにこにこと何かを口ずさんでいるところも
まったく変わっていなかった。

彼はADHDである。

注意欠陥・多動性障がい(AD/HD: Attention Deficit / Hyperactivity Disorder)
という発達障がいの一つで,集中力を持続することが難しい子どもだった。


注意欠陥・多動性障がいと言っても,
全てにおいて集中力がないわけではないので,
発達障がいだとわかる前は,
「落ち着きのない子だ!」と,たくさんの大人たちから叱られていた。
わたしも彼を叱ったことがある。


人によって症状は違うが,彼はよく手遊びをしていた。
他の子が静かにお勉強をしているときも
「ひゅーーーーがっしゃーーーん!!ばひゅーーーん。」
と言いながら手と手で争っている。
ノートと教科書を壁のように立てて,
右手と左手をぶつけあっているのだ。

「何をしているの?」
と,聞くとハッとわれに帰って
「戦争ごっこ。」と言うので驚いたりした。


国語は全くといっていいほどできなかったが
算数はかなりできた。
そしてできること,自分の好きなことにはとことん集中した。


じーーーっと座っていることが苦手な彼は
わたしに『お勉強中に戦争ごっこはやめなさい。』と叱られると
身体を右・左・右と大きく揺さぶって過ごした。
片目をつぶって天井を見ながら45分間揺さぶり続ける。
「こりゃ!!何を見てるの。」
というと
「あのさーあれ,ほら,この穴さー何個あるか数えてるんだけどさー。」
と天井にある無数の穴を指差した。



今日も彼は,まるで空に無数の穴があるかのように
時々空を見上げてはその場で回転してみたり
身体を左右に揺さぶったりしてはまた歩き出した。



彼はとてもとても優しい子だった。

ノートにポケモンのシールがたくさん付いているものを
お母さんに買ってもらったことが嬉しかったらしく,
わたしに「これ。シール。たくさんあるんだよ。」と見せに来た。
わたしは
「うわぁ!!すごいなー。いいノート買ってもらったねぇ。ほしいなー。」
と言った。
彼はちょっと悲しそうな顔をしたので
「どうしたの?」と聞くと「やぁ…うんと…。」と言いながらそっとそばから離れていった。
わけがわからなかったけれど,
彼はその当時,よく不可解な行動をとっていたのであまり気にしなかった。

次の日の放課後。
彼はわたしにノートから引きちぎったシールを差し出して
「あげることにした。決めたんだけど。」と言った。


わたしが「ほしいなー。」と言ったので
一日考えて考えた末に「あげることにした」のだと思う。

「あ!ごめんね。ほしいくらいかっこいいと思ったけれど,
でも,これはTくんのだから,いいの。
先生はとてもほしくなったら,自分で買うからね。」
というとにっこり笑って身体をゆらしながら帰って行った。



そんな彼と,とてもとても話したかったけれど,
彼が通り過ぎる前に信号が青になってしまった。


今日これから,電話してみようと思う。
どうしても話したい。
シールのこと覚えてるかな。
覚えていてほしいな。




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この記事へのコメント
お久しぶりです。僕の知らない病気ってあるんだな~って思った内容でした。僕も「親」をもっと勉強しなきゃ!
最近、超早出をして球蹴り行けました。
(^^)v
秋さんも頑張れ!応援してますよ。
Posted by アイズ at 2007年03月25日 02:14
ADHDとは始めて聞いた病名かも・・・

とても優しい子なんですね(^^)
電話してみたのかな?
シールの事は覚えていたかな?
Posted by ミント♪ at 2007年03月25日 04:43
私が小学生の時にTくんとまったく同じ行動をしている男の子がいました。
ADHDという病名が付いていることははじめて知りました。
その男の子りょうちゃんはクラスメイトにいじめられることもあったけれど、ちゃんとクラスの一員だった記憶があります。
その当時も複式(特殊学級)が校内にありましたが、普通クラスで受け入れられる程度の障害だったんですね
りょうちゃんに関しては先生に怒られていたイメージはありません。
りょうちゃんが何かに夢中になると先生はそのままやらせていました。他の子たちもりょうちゃんの行動は景色の一部となっていて授業を妨害されているとかうるさいとか思わなかった気がします。
卒業してからもりょうちゃんのママを見かけるとりょうちゃん元気ですか?気になっていました。

りゅうのクラスにも少し多動傾向のある男の子がいます。
子供達は足りないところを補い合って、その男の子の不思議な行動さえもその子の楽しい特徴と捕らえて楽しそうに遊んでいます。
りゅうも大人になったときにその男の子が少し障害があったことを知るのでしょう

長文ごめんなさい
Posted by きりか at 2007年03月25日 09:59
こんばんわ。
読むことで、秋さんという人が見えたりします。
>一日考えて考えた末に「あげることにした」
というその子の好意をどうするんだろう?と思ったら、
>ほしいくらいかっこいいと思ったけれど
と言う言葉が出てきた秋さんが優しい人だと思いました。
秋さんは先生になってよかったですね^^
その男の子と話せましたか?
楽しくお話できたでしょうか?
Posted by miku* at 2007年03月25日 18:34
ADHD
昔と比べ、その手の障害と言えない様な障害をもった子供達が多くなってきてる様に思います。主人の仕事柄 そうゆう子供達が大人になった時の事を考えてしまいました…。
特別援助・訓練校などありますが、就職は企業・本人ともなかなか難しい問題です。
難しい世の中だと思います。が、暖かい人がいるのも事実…今の大人達がこの世の中を賢明な方向へ導いていかなくてはなりませんね♪
Posted by ルーン at 2007年03月26日 15:02
T君自身、障害なんだと理解してもらえるまで、先生方も含め、周囲の人達から、叱られたり、注意を受けた居たときは、きっと、辛かったでしょうねぇ!

ノートから引きちぎってまで、シールを秋先生に上げるなんて、T君は、マジ素直で、健気な生徒さんですね!!§^。^§
まるで、myangel見たいですね!(^^ゞ
Posted by myangel at 2007年03月26日 16:39
あっ! どうも
お邪魔します
「多動」ですか・・・・振り返れば、
子供の頃、クラスに居たような・・・・
昔は、学期末に「集中力が無い」などと書かれ
それで、済まされててのに
最近では、横文字呼ばれるんですね

僕も教員免許はもってますが
教育実習で、
言葉を喋る、人格のある人の、今後に影響を与えるのは、怖いな・・・・・
と、思い教職につきませんでした

大変ですね

ではでは
Posted by soramame-kc at 2007年03月27日 08:41
>アイズさん
そうですねー。
正確にいうと病気ではなく障がいなのですが,
親御さんが知らない障害というのはびっくりするほどあります。
でも,親御さんは知らないので「育て方が悪いんだ…。」と悩むのです。
みんなに理解してもらいたいなぁ。

>ミントさん
電話してみましたよ~。この日の晩に。
40分も話しました!!
シールのことどころか,全てのことは覚えていませんでした。。。(笑)
でもとても嬉しそうに最近のことを話してくれました。
20歳になったら会いにきてくれるそうです。
忘れないといいけど(笑)

>きりかさん
りょうちゃんがちゃんとクラスの一員になれていたこと,とても素敵です。
担任の先生も周りの子達も,心の優しい人ばかりだったんですね。
軽度の発達障がいは,だいたいIQ75~80くらいをさしますが,グレーゾーンなので,通常学級にいても不思議ではありません。
わたしが今までみてきた経験でいくと,35人学級に3人くらいは軽度の発達障がいをかかえる児童がいるとみてもいいでしょう。
(ADHDとLD,アスペルガー症候群)など。

思っているよりもずっと多いのです。
周りの支えが必要ですよね。

>miku*さん
あらー。ほめていただけて嬉しいです。
いつも対応するときにはとても迷うんですが,その子の気持ちを踏みにじらないように,傷つけないように,気をつけているつもりです。でも,たまに失敗して,保護者の方からお怒りの電話をもらうことも。
いろいろあるけど,子どもはかわいいです♪

>ルーンさん
ご主人はそういう関係のお仕事につかれているのですね。

確かに…。軽度の発達障がいだとアルバイトをしたりもできるようですし,自閉症でも単純作業を黙々とこなすことができる人だと作業所とかで一生懸命頑張っているようですが,
重度になると難しいようですね。
年金にしても医療制度にしても弱い立場の人たちのことを考えた国づくりを政府に強く要望したいです。

>myangelさん
そうなんです。
秋もその1人でしたからね。
わからなかったんです。
落ち着きがないから厳しくしないと!って思っちゃって。
彼にはとてもかわいそうなことをしました。
障がいについて,1人でも多くの人に知ってもらいたいのです。

>soramame-kcさん
そうですね。
昔だと「んもう!落ち着きがないんだから!」って言われていた子どもたちだったのかもしれません。
今は「ADHD」と横文字で呼ばれることが圧倒的に多いです。
わたしも教職についていますが,
児童に良い意味でも悪い意味でも影響を与えていると思うと怖くなることもあります。でも,やっぱりこの職業が好きです。
Posted by at 2007年04月01日 21:48
 

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